TACOMであります。
ここ数日間、体調を崩してしまい臥せっておりました
そのせいかどうか分かりませんが、硫黄島空域で試験中の
TACOM(多用途小型無人機が、エンジンの不時停止で
落っこちたようです。
UAVは落っこちてナンボってところがありますから、この
失敗を次に生かして欲しいと思うところであります。
あの機体はテレダインのエンジンを積んでいたころから
エンジンには泣かされていたようですから、関係者の心中を
お察し申し上げます。
さて、このTACOMですが元々は空自が独自研究していた
ターゲットドローン(J/AQM-1)の偵察型と陸自が運用して
いるチャカR(BQM-74偵察型)の後継を統合して開発が
始まったという経緯を持ちます。
部研が始まったのは平成6年ですから、大分前の話です。
勿論、偵察だけではなくペイロードの交換又は小改修により
様々な任務へ対応することが想定されていました。
開発当初の主な目標性能は以下のとおりです。
- 飛行性能: 高速領域において高い航続性能を有すること。
- 飛行方式: 地上からの誘導飛行及びプリプログラム。
- 発信方式: 戦闘機クラスの航空機からの空中発進及び地上発進。
- データ伝送機能: 即時性、保全性、対妨害性を有すること。
- 航法機能: 自立航法が可能であること。
- 制御機能: 目標画像等の継続的な補足・追尾が努めて可能であること。
- 回収方式: 地上及び海上において努めて高精度に回収ができること。
- ステルス性能: レーダー有効反射面積が努めて小さいこと。
- 偵察機能: 昼夜間の偵察が可能であること。
- 整備性: 部隊の展開、無人機の回収後の再発進が短時間でできること。
- 発展性: ペイロードの交換及び機体の小改修により各種用途に転用可能なこと。
以上で目に付くのは、地上部隊が運用できるための要求が
入っていることです。当初、TACOMの回収方法はパラシュートと
エアバッグによる垂直落下方式でしたが、現行は滑走路への
着陸に変わっています。これは要求が変わったのか、
エアバッグ+パラシュートによる回収方式が難しいのか
(試験ではエアバッグが開かず、機体を損傷した事故が
あったやに記憶しています)、何らかの事情があったのかも
しれません。
そして用途としては以下の項目が挙げられていました。
- 偵察
- 電子戦
- 対レーダ攻撃
- フライングテストベット
- 標的
- おとり
さらにもう一つ、この機体から多数の小型爆弾を放出する
スタンドオフ・ディスペンサ型が構想されていたことも忘れては
ならないでしょう。これは例のUS-1A改事案でポシャリ
ましたが。
TACOMに関する考察は次回に行います。
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コメント
回収に海自の手を借りるのが空自的に不満で、と仰っていたOBさんがおられました…
投稿: | 2010年2月14日 (日) 07時47分
>エンジンには泣かされていたようですから
この手のエンジンは国産化は無理なのでしょうか?ターゲットドローンや巡航ミサ〇ルへの転用も効くと思うのですが・・・。
>投稿: | 2010年2月14日 (日) 07時47分
さん
なるほど、そう考えると重量増加となる降着装置を備えた理由が頷けます。
投稿: 雨辰 | 2010年2月14日 (日) 10時46分
量産化前提であれば国産エンジンも開発するでしょうが。
パラシュートとエアバッグによる垂直落下方式なら射撃レンジから出ずに運用も可能で、専用のエンジンの国産化も可能だったかも知れませんが
訓練エリアを飛び出して滑走路に自動着陸する方式では、将来、航空法の改正の見通しも無い現状では制式装備化・量産の見込みも無い実験機となるので、海外のものを調達するしかないでしょうね。
あと、防衛省の事業評価を見ると現在の研究名称は
多用途小型無人機ではなく、無人機研究システムのようですね。
投稿: | 2010年2月14日 (日) 21時56分