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2010年12月28日 (火)

96式多目的誘導弾システムの話であります。(その2)

いやー厳しいですなぁ。大綱ではP-1の新規取得は、たったの10機ですかぁ。P-3Cの維持の方に金を廻してくれるとこちとら助かるんですが。

さて、先日の96式MPMSお話の続きです。取りあえず、以下のビデオを見て下さい。

これはイスラエル・ラファエル社製の対戦車ミサイルSPIKEの映像です。このミサイルは誘導弾の光ファイバー経由で送られてくるシーカーの映像をもとに射手が誘導するタイプのものです。そう、96式MPMSとほぼ同じ誘導方式です。(96式では初期・中期はプログラム誘導による自立航法ですが)

映像を見ると、かなり広範囲の戦場の様子を視認できます。96式MPMSでは高度200mの水平巡航飛翔時において、搭載しているシーカーは約600mの捜索幅を持っています。(弾道飛翔することも可能) SPIKEはスタンドアローンで発射される誘導弾ですが、96式MPMSでは1台の射撃指揮装置により、2台の地上誘導装置が統制され、誘導装置画面が送信されてきます。各ミサイルから送られてくる映像情報を統合することにより、射撃指揮装置ではかなり広範囲の戦場情報を得られることになります。

これにより、例えば誘導弾によって撃破した目標の映像を記録して損害評価に役立てる他、既に撃破した目標のマップを作成しておいて後続の部隊に伝達することによって、無駄な攻撃を避けることができるようになります。HEAT弾頭で撃破した際は、目標内部は破壊(=乗員)され、見た目は無事なように見えてもでも既に機能を停止している場合があるのですが、マップにより無駄な攻撃を避けることが可能となります。

96式MPMSが何台もの車両により構成されるのは、長射程のスタンドオフ兵器ゆえに求められる指揮統制能力と目標情報の収集ができるこの誘導弾ゆえの情報処理能力を求められるからでしょう。

さて、現在は96式MPMSの後継となる将来ネットワーク型多目的誘導弾システムの研究が行われています。これは、ユニットで行っていた目標情報処理等を指揮統制ネットワークに組み込むことによって得られるようにし、また誘導弾自身に自律的な目標捜索・識別能力を持たせることにより、大幅な省人化とコストダウン、リアクションタイムの短縮、機動性の向上をはかったものと推察します。

Fnmpms_2

本年のblogの更新は今回で終わりです。今年1年間、当方の駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。そろそろネタ切れの感もありますが、来年も適当に続けたいと思っておりますのでよろしくお付き合いの程お願いいたします。

さて、来年が皆様にとって良い年になりますように。

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2010年12月10日 (金)

96式多目的誘導弾システムの話であります。

ご無沙汰しております。

世の中、騒がしいですが早速話題に入りますhappy01

日本で開発・生産されたミサイルの中で、個人的に一番
面白いと思っているのが、実は96式多目的誘導弾システムなのです。

以前の資料を読み返してみると、結構発見があったりします。
例えばこんな記述です。

「(イ)対舟艇 波高2m以下で10ktで直進及び横行する目標(目標の形状は、LCM(6mW x 21mL x 5mHとする)に対し、次のSSHPを有するものとする。 (ウ)その他の目標 対舟艇と同等の条件下で、掃海艇、ACVに対しても(イ)と同等のSSHPを 有するものとする。」

ACV(エアクッション艇)が入っているのはわかるのですが、
掃海艇まで目標として考えられているのは驚きです。
上陸作戦の前には必要に応じて、上陸海域の掃海が
行われますから、掃海艇を沈められれば、相手の上陸作戦
を遅延せしめられるかもしれません。

96式MPMSで特徴的なのは、何台もの車両にて火力単位を
構成することです。(下図参照)

Iz1996p4301_029

96式多目的誘導弾システム制式要綱より。

以下にそれぞれの車両の役割について記述します。

(1)情報処理装置

  • 普通科連隊火力調整所、自隊観測員等から得た目標情報の集中管理
  • 射撃指揮装置に対する射撃目標等の配分・送信
  • 自隊の展開位置、交戦状況等の部隊現況の把握

(2)射撃指揮装置

  • 地上誘導装置、発射機及び自隊観測員の統制
  • 自隊、情報処理装置から得た目標情報の集中管理
  • 地上誘導装置に対する射撃命令・号令の作成・送信
  • 地上誘導装置の展開位置、交戦状況の把握
  • 地上誘導装置の画面のモニタ・記録・再生

(3)地上誘導装置

  • 射撃統制及び誘導、照準誘導統制を行う。
  • 誘導装置画面の記録・再生及び射撃指揮装置への送信。

(4)発射機

  • 誘導弾6発を挿入した誘導弾マガジンを1基搭載。
  • 誘導弾マガジン単位で装填する機能を有する。

(5)装てん機

  • 誘導弾マガジンを4個積載して運搬し、発射機に却下する。

何かこの構成を見て、思い出しませんでしょうか。そう、88式
地対艦誘導弾の構成とそっくりなのです。以下にそれを記します。

                                                                                                                                                                                                                                                                       

構  成  装  置

       
         

数 量

       
         

誘  導  弾

       
         

  実弾(又は演習弾)

       
         

96発

       
         

地 上 装 置

       
         

  捜索標定レーダ装置(JTPS-P15)

       
         

 6組

       
         

  中継装置(JMRC-R5)

       
         

12基

       
         

  指揮統制装置

       
         

 1基

       
         

  射撃統制装置(JTSQ-W5)

       
         

 4基

       
         

  発  射  機

       
         

16基

       
         

  装 て ん 機

       
         

16基

       
         

  擬  製  機

       
         

所要量

レーダーと中継装置を自隊観測員と置き換えれば、まさに
そのままの構成です。

96式MPMSは戦車やその他の陸上目標を狙うというよりも
LCMや、ACVなどの揚陸手段を狙うのがその主たる目的で
しょう。遠距離で且つ動く目標を撃破するためには、
上部司令部と直結した情報処理能力を持ったプラットフォーム
であることが重要になってきます。

そして、もう一つ96式MPMSには他者にはない優秀な能力が
あります。それは次回ということで(◎´∀`)ノ

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